2021年5月8日土曜日

鉄路を活かす

 廃線とされたものの鉄路は残っているなか「日高線の今とこれからを考える」トークイベントが浦河町で開かれました。主催は同プロジェクトで、昨年10月に続く2回目の開催。今回は私も参加させていただきました。

 2015年1月の高波被害に、結局JR北海道は鉄路の復旧を拒みました。早期の復旧を願う自治体や住民の声に背を向け続け、廃線を見越したものかと疑念も湧きました。私も何度も足を運び、バス転換が打ち出されてからも懇談や要請を続けてきました。生活路線として必要なだけでなく、風光明媚な日高路を走る観光路線としての価値があっただけに残念でなりません。

 維持・存続を求める運動のなかで、町づくりと合わせた議論が広がったことは財産になったと思います。このように語り合う場が続いていることに、私も学びたいと足を運びました。鉄路はじめ公共交通と町づくりの課題は、道内どこでも抱える課題でもあります。

 トークイベントでは、徳島県・阿佐海岸鉄道のDMV(デュアル・モード・ヴィークル)記録影像が上映されました。DMVはJR北海道でも導入検討の時期があったのですが、現実化した姿を影像で見て率直に驚きました。北海道で定着できていたら‥‥と思いつつ、今年7月に開業予定だそうで、技術面や採算性などをさらに知りたいと思いました。

 パネラーによる発言は、浦河町長・池田拓さん、前・新ひだか町長の酒井芳秀さん、安全問題研究会・地脇聖孝代表、旧日高線を歩く会・加藤広明代表。鉄路や町づくりへの情熱が伝わる、どの方の発言にも引き込まれました。

 池田町長は「公共が、黒字か赤字かという議論に片寄りすぎてないか」と問題提起。乗らないから廃止という考えでは今のバスにも当てはまる危険があることや、鉄路や浦河駅の利用も課題として町づくりを考えたいと述べました。日高町村会長だったころJR北海道のDMV開発の見学にも行ったという酒井さんは、新幹線札幌延伸の一方で並行在来線が切り離される問題に触れて「民の立場に立った政治のあり方が問われている」と危惧を示されました。

 地脇さんは、陸別町の動態保存や静岡県の馬車鉄道の取り組み、「北海道開拓の村」で走らせている馬車鉄道の費用なども紹介しつつ、「鉄道を公共という視点から立て直してほしい」と期待の声。加藤さんは自分と浦河駅の歴史を振り返りながら、仲間50人と「廃線ウォーク」を成功させたいと語りました。今ある鉄路を活かすことは多くの方が望んでいるのだと、お話から伝わってきました。

 会場からの意見・質問を受けて、最後の発言で池田町長は「JR北海道・島田社長に鉄道関連跡地の活用に送電線・送電網分野へ参入することや、貨客混乗なども取り組んではと提案したんです」と披露されました。今はいろんな可能性に挑戦する時だと、そんな思いの交流に多くのことを学びました。

 コロナ禍という難しい条件のなか、こういう機会を準備してくださった主催者のみなさんに感謝です。会場ホールには浦河高校美術部で描いた日高線の絵も展示されていたのですが、実は浦河駅にも、過去に同美術部が描いた壁画があるとのこと。地域に根差してきた鉄道・鉄路の資源を活かすため、政策も実践も階段をもう一つあがって頑張らなければ。

 【今日の句】情熱と 可能性から 未来見え

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