2018年4月19日木曜日

国の主権の問題として

 ロシアのサケマス流し網漁禁止などで打撃を受けている根室市で、千島問題を中心に懇談にまわる1日となりました。

 まずは朝に市役所前での宣伝。写真でわかるでしょうか、昨日の釧路と同様に霧の根室。少し肌寒く、道東地方の春はもう少し先といった感じです。

 懇談先は道根室振興局、千島歯舞居住者連盟、市役所に。根室振興局では「北方領土遺産発掘・継承事業」について、千島連盟では元島民のみなさんの今の思いなどを中心に、そして市役所では北特法の改正や四島における共同経済活動にかかわっての課題などをうかがいました。前後しますが先日夜には、加工業者さんからの話もうかがいました。内容が多岐にわたり、私も整理しきれていないので箇条書きに、私の感想も交えて記しておきます。

 ●水揚げ量の減少が、地元の関連業者を直撃している
 昨年、根室市内の総水揚げ量59000トン台と、市制施行後の最少記録となりました。主要のサンマが23%減、秋サケも前年の4割のうえ、ロシアがサケマス流し網漁を禁止してからの代替漁業も効果は得られなかったことなどが要因です。その結果、原料が入らない地元の水産加工業などが大きく打撃を受けました。2016年1月から今年3月までで、根室市では水産加工業5件・運輸業1件・製函業4件・小売業10件の計20件が廃業となっています。一般的な経済要因や後継者不足もありますが、大きくは水揚げ量の減少が引き金となっていると思われます。あらためてロシアによる領土支配の問題の根深さを痛感します。

 ●ハッキリ国の主権の問題として位置づけを
 自省の意味も込めて、あらためて国の主権の問題としての位置づけを明確にすべきと思いました。運動の中心は根室市や隣接地域、元島民や2世・3世のみなさんが必然となるものの、それが国民向けに「元島民の問題」「地域的な問題」と矮小化してとらえられることになっていないでしょうか。国の方も運動に対する支援は十分でなく、現地は持ち出しをしながら世論に訴えを続けています。北特法にもとづく財源確保も、低金利のなか運用益は下がり続けているのに抜本的対策は打たれてきていません。基金の取り崩しなども声としてあがっていますが、根本は国の対策が後手にまわったためだと思うのです。

 ●元島民の権利擁護を、真剣に追求する
 四島には「墓参」「自由訪問」「ビザなし訪問」などの事業がありますが、数々の課題があります。列挙すると「事前に書類を提出しているのにチェックポイントで何時間も待たされる」「そのあげくに引き返させられて、今回が最後と思って来ている元島民には耐えがたい」「港についても墓までの道が整備されていない。人ひとり通る分くらいでも、事前に草刈りなどやっていてほしい」。また、着の身着のまま逃げてきたために島には生活物資や漁業資材がありました(「残地財産」)。その保障は国のもとでおこなわれる必要があります。「元島民は『引揚げ者』と言われるが、私は『緊急避難者』と言っている」との言葉を、重く受け止めたいと思いました。

 ●四島での共同経済活動が具体化されず、現地は困っている
 安倍首相みずから旗を振ったわけですが、本来なら今春までに具体化されるはずが進んでいません。外務省に聞いても「交渉は順調」と言われるそうですが、まったく中身は伝わっていません。国の今年度予算では農水省や環境省などで関連予算がありますが、こちらも具体的な動きにはなっていません。地元企業が加わらず本州などの大手資本だけの儲け口とはならないようにと、市や地元業者からは何度も声があがっています。市にとっては進展具合がわからないと関連施策も実施しにくいだけに、国が現状の見通しをまずは説明することが大事だと感じました。

 ●運動の後継者対策に本腰を入れる
 元島民の平均年齢が83歳になり、2世の方々も60代となります。会社勤めをしながら時に休んで返還運動や啓発キャラバン、全国集会などに参加してきましたが、地域経済の状況が厳しくなっているもとで休めなくなってきています。先に書いたように運動資金も十分でなく、3世・4世までが運動を担うには大きな障壁となっています。くりかえしの学習も必要ですし、現地任せにできない状況になっていると思います。道根室振興局での「北方領土遺産発掘・継承事業」は期間3年で昨年度で終了していますが、当時の映像や数々の新たな記録が見つかって展示会なども開き、市民などに好評だったようです。地域に専門職員を置く重要性があるし、そのために国なども責任を果たすべきです。

 ●侵攻の歴史や領土交渉の経過など、あらためて理論的に検証を
 サハリンとアメリカで見つかった資料から、ソ連軍の侵攻には米国の艦船が使われていたことが判明してきました。当時の米国には武器貸与法があり、ソ連に対しても対独戦争への支援として適用されていたようです。一方で、ソ連兵と米兵による訓練「プロジェクト・フラ」の存在も明らかになっています。ソ連の侵攻自体は領土不拡大の原則に反する行為ですが、同時に米国のかかわりをどう見るかは今後、国際的に訴える際の事実と理論的根拠として大事な点になるかもしれません。これは、わが党としても検討を深める課題として受け止めました。

 まだまだ課題はありますが端的にまとめれば、1つに地域経済が深刻になっているもとでの緊急対策、2つに墓参や交流事業などの確実な実施と拡大、共同経済活動については現状を国が知らせること、3つに歴史を再検証していくこと、となると思います。重い課題ではありますが、過去の歴史に正面から向き合うことこそ日本共産党の役割。その自覚をもって事に当たりたいと思いました。

 【今日の句】自民さん 本音どうなの あのゴルフ

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