2021年9月15日水曜日

酪農郷を守れ

 今年はヒグマによる人的被害も相次いでいる道内で、厚岸町・標茶町では家畜被害によって酪農経営・地域経済の損失が「災害レベル」(標茶町長)という実態にも見舞われています。石川明美・道7区予定候補とまわりました。

 厚岸町では町役場で若狹靖町長はじめ担当課長さんら、同町の釧路太田農協では德田善一組合長さんら、標茶町では町役場で佐藤𠮷彦町長と担当課長さん、標茶町農協では鈴木重充組合長さんらが応対してくださいました。同行してくださった厚岸・石澤由紀子町議、標茶・渡邊定之町議は、いずれも酪農家。移動の合間に話を聞くことで、さらにリアルな実態がわかることで認識も新たになっていきます。

 厚岸町では今年になって4件、町営牧場などで死亡7頭・負傷2頭の被害が出ています。町営牧場では1600頭いるのですが、放牧地から牛舎へと引き上げています。牧草を食べられないため今は農協から牧草を買っているそうですが、その分の飼料代が増すことになります。広い牧草地のほうが牛の健康にもいいのはわかっていますが、それができません。襲ったクマは1個体と思われますが見つけられず、冬眠を終えて来年も同じ事態となれば営農計画に大きく影響します。農家の負担も増えていきます。

 国は電気柵設置の補助制度もありますが、年度途中からの申請と手続きでもあること、傾斜地などでの設置には時間がかかること、放牧が始まる来年6月に間に合うかという問題や、設置しても漏電しないように下草を刈り続けなければならない問題もあります。広大な農地を抱える農家では、とても対応できません。先に書いたように、何より放牧が最もコストもかからないし、乳牛にとっても最適の環境なのです。

 実際に被害にあった酪農家さんからも話を聞きましたが、クマは昼は現れないので夕方・夜中・朝と3回の見まわりをしているとのこと。夜の見まわりは怖いでしょうと聞くと、ロケット花火を飛ばしてから行くとのお答え。1頭が被害に遭った直後は、夜は牛舎に入れていたそうですが、夜のエサも変わったためか乳量が増えなかったそうです。直接・間接に、被害が続いています。

 標茶町では3年連続の被害で、合計で死亡18頭・負傷27頭・不明3頭。佐藤町長も鈴木組合長も「災害レベル」と口をそろえました。今年は牧場の近くまでクマが出没し、人への危害に及ばないかとの心配も出ています。猟友会でもクマを撃てる人は限られていますし、ワナにかかったクマを山に帰すと言っても興奮状態にあるクマは危険ですし、動物園なども引き取りません。現行法では、ワナにかかって動けないクマも夜は撃つことはできません。そのため脱出したクマもあったと言います。

 いわゆる「春クマ駆除」をやめたこともあるのでしょう、推定頭数は増えていると道も認めています。その一方で、クマと酪農家がバランスよく共生できていたのに、頭数が増えたことでバランスが崩れてきたのではとの話も聞きました。全体の頭数管理と味を覚えた問題個体の駆除、そして緊急の防御対策への支援という両面の対策が必要になっている状況です。何しろ広範囲を移動するのがクマですから、国や道がいっそうの責任をもってあたっていく必要があります。

 あわせて、コロナ禍での影響も聞きました。需要が減るなか乳製品の在庫が積み上がり、毎日の生乳ですから加工・保管が日々迫られ、さらに在庫が積み上がる悪循環になりつつあります。増産と規模拡大を目的に、国が推進してきた畜産クラスター事業のもと、さらに増産が進めば、この悪循環が加速してしまいます。価格が下がれば、設備投資した分の返済ができない酪農家が出てきかねません。

 やっぱり、価格が安定していないと農家は続けられないというのが結論です。昨年はバターなどの輸入制限もして国内供給を優先しましたが、国は今年も緊急対策をする必要があると痛感しました。しっかり今日の内容を反映していきたい。

 【今日の句】この牛乳 命によって 生み出され

0 件のコメント:

コメントを投稿