農地として開拓されてきた矢臼別が自衛隊演習地として買収されていくなかで、「ここに住みたい」と売らずにきた故・川瀬氾二さん。現在は浦舟三郎さんと二部黎さん・倉谷あみさん夫妻が住まわれています。昨年は8月の平和盆踊りが中止となったため行けず、久しぶりの矢臼別訪問。済んだ青空が気持ちいい。
この法案ですが、米軍や自衛隊などの「重要施設」の周囲おおむね1kmや国境離島を「注視区域」と国が指定し、域内の土地や建物の所有者や貸借人などを日常的に調査できるものになっています。特に重要なところは「特別注視区域」として土地の売買に届け出を義務づけます。調査の結果、重要施設などの機能を「阻害する」またはその「明らかなおそれ」があれば土地・建物の利用中止を勧告・命令できるとしています。「阻害」「おそれ」の中身は明らかでないため、時の権力のサジ加減で調査や私権制限が拡大しかねないのです。
川瀬牧場へ行くには演習場にはさまれた町道を通っていきますが、途中で演習場への入口もあり、演習時には監視者がいます。川瀬牧場へ行く車などもチェックされているといいます。日米共同訓練もおこなう矢臼別ですが、それを「阻害」しているとなれば、ピース矢臼別の地や平和盆踊りも対象とされてしまうのではないか。そんな強い問題意識と怒りをもって、浦さんや二部さんから話をうかがいました。
この地に浦さんが住み始めたのは1989年。「ここに住み続けることが平和運動」との思いを持って32年になろうとしています。安保法制がある今の日本で、戦争できる国になるのではないかとの強い危機感があります。二部さんは彫刻家として制作にも励み、4度目の冬を過ごしたばかり。域内の彫刻3点は「この地の平和活動があったからこそ」できたもので、文化活動の拠点としてのこの地の大事さも語られました。
まだ幼い顔が残る若い隊員が夜間歩行訓練をおこない、まだ暗い早朝に散歩に出た二部さんが、歩道で倒れ込んでいる隊員を見つけたことがあったとも言います。車で通ってもゴロゴロと寝転んでよけるほどの疲労困憊ぶりで、「孫の年齢の彼らが戦場に行く訓練をさせられているかと思うと、隊員を戦場に送るなとの思いを持ちます」と二部さん。演習を間近で見ているだけに、その言葉が重く響きました。
演習場付近の農家もまわりましたが、まだまだ法案の中身は知られていないこともわかりました。国会での審議はこれからですが、世論を広げて廃案にしなければ。何しろ「新たな治安維持法と言うべき危険な法律」(琉球新報3月27日付)だと思うのです。ぜひ、まわりの方にお知らせください。
ところで浦さん・二部さんと懇談している写真の場所は、2019年に開館した矢臼別平和資料館(現在はコロナ禍のもと休館中)。戦中からの歴史や矢臼別を訪れる野鳥や周辺の自然など、丸ごと矢臼別を知ることができます。豊かな酪農の郷であり、大自然の中での平和と文化の拠点は、長年の積み重ねによるものであることもわかります。コロナ収束後にはじっくり見学に来たいと思いつつ、矢臼別を離れました。
【今日の句】砲弾の音より 鳥のさえずりを
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