2018年10月31日水曜日

大元から酪農政策を問う

 大停電での被害、TPPや日欧EPAなど苦難が絶えない酪農家の状況が、よくわかった今日の調査。標茶町を田村貴昭衆院議員とまわりました。

 道内は雨が降ったところも多かったようですが、標茶町は気持ちよいほど晴れ! 草を食む牛の姿も見ながら、まず向かった先はJA標茶。千葉孝一組合長・鈴木重充専務が対応してくださいました。

 被害額は算定しにくいのですが、乳価100円として1.4億円ほどかと想定される標茶町。今後に向けて、発電機を一戸に一機、配置することをめざすとしています。あわせて配電盤も必要となります。「それでも搾乳ロボットを入れれば付けっぱなしにしないといけないから」との理由に思わず納得。大規模化・機械化を進めるほど、電気の利用時間が長くなるのですから当然です。

 標茶町は町としてエコビレッジ構想がありバイオガスプラントも1ヵ所ありますが、北電が接続しないため「やりたくてもやれない状況」です。各地で同じようなことを聞いてきただけに、あらためて北電の責任は重いと痛感しました。せっかくの発電資源が生かされないなんて、あまりにもったいない。

 TPPや日欧EPAにかかわっては「日本の牛乳は国が守る姿勢を示してほしい」と述べられました。乳価は上がってきたものの、経済的安定性がなければ経営も続きません。ヘルパーの人材不足にも話題は及び「ゆとりがあれば後継者はついてくる」、また「新規就農対策とともに後継者向け施策の充実をと組合員からも言われている」との話もうかがいました。しっかり反映させたいと、田村衆議と応じました。

 次にうかがったのは標茶町虹別の千葉牧場さん。対応いただいたのは千葉澄子専務さん。指導農業士会の理事や農協監事も務めているだけでなく、「若い女性が真に参画できるように」と女性向けカレッジ(勉強会)を続けていて、近隣自治体から何と60人ほど参加するまでになっているのです。

 ふだんの経営について印象に残ったのは、娘夫婦やパートさんなども一緒にミーティングを必ずおこない、目標を明確にしながら休みも必ず確保しているということでした。ここに至るまでの千葉さんの努力やご苦労も聞くにつれ、上からの押し付けでなく自発的な経営を後押しするような施策のありかたを考えさせられました。

 「気がつけば3000トンを搾るまでになったけど、これが今の限界。今の乳価と個体販売価格だからこそ成り立っている」と、TPPなどの影響も考えれば今の乳価以上が必要だと話された中身に納得です。話がお孫さんのことに及ぶと、やさしい笑顔になった千葉さん。「元気にやれるような農業にしないと、後継者もできないし」との言葉も心に残りました。

 いったん釧路市へ行き、よつ葉乳業根釧工場へ。一昨日の稼働したばかりの自家発電機も調査・見学させていただくことができるとのことで、足を伸ばしました。山田政満工場長さんらが対応してくださいました。

 ご存知のように、大停電時に自家発電によって工場を稼働できたのは、よつ葉乳業の2工場のみでした。根釧工場も導入予定だったのですが間に合わず、一昨日の稼働となったとのこと。停電が起きても工場のピーク電力をまかなえるようになります。率直にランニングコストなどについても聞きましたが、やっぱり生乳を停滞させるわけにいかないという使命感の話もうかがいました。

 そうなると他の乳業工場はどうするかと関心が向きますが、製品を出荷できても流通や小売段階が停電のままではさばけない、それなら製造する意味はあるのか--との論議もあると聞きます。各社の経営判断となるでしょうが、全般的な供給体制の確保は課題だとあらためて思いました。

 ともかくも発電機そのものも見せていただき、緊急時の対応や人員配置についてもうかがいました。たいへん勉強になりました。

 夜は標茶町へ戻り、酪農家のみなさんと懇談。大停電での対応から始まり、今の農業政策の「基本がゆがんでいるんじゃないか」との話にも。「いろんな選択肢を準備すると国は言うが、実際は大規模一辺倒。どの規模でも続けようとする人を応援してほしい」「中途半端に規模を増やすと、家族でできなくなる。大規模化すれば、地域にも人がいなくなってしまう」など、今の酪農政策を大元から見直す必要があることでは話は一致しました。

 価格保障や所得補償が充実すれば、個々の経営判断で柔軟に投資や集団化も、自発的に可能になる素地ができます。しかし今の国の補助金事業となれば、規模拡大や効率化など条件が絞られたり、大規模施設偏重ともなりがちです。農業予算の使い方も見直していくべきですね。

 本当の多くのことを学んだ今日1日。明日は紙智子参院議員も加わり、別海町・浜中町をうかがいます。

 【今日の句】根づいてる 農家がいての この大地

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