荒天のため予定していた斜里町出張がなくなり、急きょ行き先は釧路市へ。JR移動はじっくり本を読めるだけに、私にとっては一番ぜいたくな時間です。
今日持参してきた本の1冊が、藤田和恵著「ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること」(岩波ブックレット)。
著者は北海道新聞記者時代に、派遣労働を取り上げた連載「派遣さんと呼ばないで」などを手がけていて、現在はフリーライター。
その連載は私もよく覚えていて、正規労働と非正規・派遣労働の矛盾に、深く考えさせられた記憶があります。
著者が迫った本書のテーマは「なぜ非正規労働者が、橋下氏を支持するのか」。
その大前提として、ていねいな取材で次々と紹介される「官製ワーキングプア」の実態や、民間非正規として働く「一人ひとり」の思いを掘り下げていく文章に、ぐいぐいと引き込まれていきます。
その対比で示される、公務員労組や日本労働組合全体の現状。
著者は労働組合を否定するものでなく、むしろ今こそ労働組合の出番だと激励し展望も示す書だと思うのですが、それ以上に橋下氏への支持が広がる社会構造や不満の蓄積が、どれだけ大きな問題なのかと考えさせられます。
書名に「労働格差」の言葉があるように、新自由主義路線で広がった、とりわけ公務職場でのその矛盾が、どれだけ深刻なものかがわかります。
また同じく「ポピュリズム」の言葉はあるものの、本文中にその語は一度も登場しません。
安易な決め付けよりも、その背景を深く捉える必要があるのではないか、との著書の問題意識の現れでしょうか。
橋下氏や維新の会の政策は、登場するような方々の生活を救えるものではないし、このまま突き進めば、どこかで政治的に大きな矛盾が生まれてくるでしょう。
しかし、だからと言って、橋下氏や維新の会を批判するだけや、達観したような物言いだけをして済むような状況なのか。
この「労働格差」のもとで苦しむ、多くの方とどうすれば手をつなげられるか、政党としても労働組合としても真剣な取り組みが必要なのではないでしょうか。
多くの非正規職員・労働者がいることで成り立っている、今の日本社会の現実。
その現状を当然視するわけにはいきませんが、苦しみ悩む、その当事者の声を受け、労働環境改善であったり、社会の制度改善であったり、本気で取り組む姿勢になっていたのか。
仮になっていたとしても、その姿が映っていたのだろうか。
橋下氏のようなパフォーマンスに長ける、という意味でなく、地に足をつけた形で結びつくことが必要だと痛感しました。
その観点は、著者も本書で指摘しています。
ウンウンうなって考えているうちに、JRは釧路市へ到着。
思ったより雪も多くて、驚きました。
明日は新春交流会で、厚岸町へ向かいます。
【今日の句】 この格差 つくってきたのは 誰なのか
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