2015年10月18日日曜日

農水委員会視察の報告(オランダ編)

 委員会視察の後半はオランダです。ミラノは車の数に驚きでしたが、アムステルダムは自転車の町!  専用車道もあり、各国の文化や制度の違いは興味深いですね。
 
 オランダの農業現況ですが、イタリア同様、国土の約45%が農地という農業大国です。
 
 そのうち何と国土の4分の1が干拓地で海面より低いのですが、まったく地震なども起きない地域であり大きな自然災害に見舞われなかったようです。
 
 視察時の気温は一ケタで肌寒さを感じる冷涼な気候だけに、主要農産物は北海道と重なり、ばれいしょ・甜菜・生乳などで、いずれも日本の産出額を上回ります。
 
 もちろんオランダは有名な「花の国」であり、花き類の輸出額は大きいのですが、ばれいしょも実は輸出額で世界第1位、全体でも米国に次ぐ世界第2位の農産物輸出大国なのです。
 
 農家も、この10数年ほどで農地の集約が進んで平均面積は25haを超えます。
 
 輸出の原動力になってきたのが施設園芸なのですが、後述するように規模も経営手法も想像を超えるようなものでした。
 
 オランダでは、①花き卸売市場の視察、②施設園芸農家の視察、③研究と産業との連携について学ぶことが中心です。
 
 朝早くホテルを出て花き卸売市場へ向かうのですが、イタリアもオランダも朝7時を過ぎても日が昇らず暗いのです。
 
 ただでさえ時差ボケなのに‥‥と思いながら市場(フローラホランド)に着くと、眠気が吹っ飛ぶ面白さ!
 
 面白いというと不謹慎かもしれなせんが、ポットに入ったきれいな花のロットが、せり にかけられた後の各地へ運ばれるシステムが非常に効率的なのです。
 
 行った時には終わっていましたが、せり自体も大学の大教室のような部屋で、巨大なスクリーンと備え付けのパソコンを見ながら、目当ての花をせり落としていくのです。
 
 ここまでネットワーク化できると、当然のごとく在宅でもせりに参加できるのだとか。

 でも花にせよ野菜や魚にせよ、現物を見ないで大丈夫なのかと思いましたが、ここに運ばれる花はAクラスで品質も保障されており、それを裏付けるのが市場内にある研究室でした。

 ここでは数日間、家庭内などで花が置かれたら何日もつのかなど、データを蓄積しているのです。

 それ以外の花情報なども合わせて、せりにかかる花の品質情報がデータとして、せりの際にも重視されているようでした。

 そもそも、この市場は花き生産者が主体となり、集積させて販路を開くという歴史があったとのこと。

 この市場への登録は、生産者はもとより流通業者や他国の生産者も会員となり、理事会のような場面では生産者も同等の権限を持って運営に参加しています。

 「生産者の収入確保と販路確保」という当初の目的が今も貫かれるなかで、6つあるオランダ花き市場のうち最大規模の市場となったのでした。

 先進的な技術や効率的なシステムに目が行きがちですが、生産者を中心に、生産者自身も中心としての役割を担っていることが印象的でした。

 生産現場にかかわる視察先は、ウェストラント市のグリーンポート(施設園芸産業の集積地)にて3.5haの温室で年間約1500トンのパプリカを生産しているフォルスターさん宅。

 ここも移動中の窓から見える風景は大牧草地で、いっけん北海道にも似ているのですが、丘陵や山々が先に見える北海道と違い地平線まで牧草地なのです。

 しかも、その面積に比して牛などの数も少なく、ひろびろ~として草を食んでいました。

 それとは異なる姿を見せたのがこのグリーンポートで、巨大ハウス(温室)が立ち並んでいる様子はあまり日本には見られないもの。

 アムステルダム空港に降りる時も、上空から巨大なハウス群が目に飛び込むほど、それはそれは大きな温室なのです。

 温室内に入ってそのスケールにビックリ! 写真でわかるでしょうか。

 耕作地はなく、宙に浮かせたパイプからパプリカの枝がニョキニョキと4~5mも伸びています。

 中心から見て左右とも確か90m、ずっと奥は300mほどだったでしょうか。

 オランダは天然ガスが産出されるのですが、大型ガスボイラーを購入した後にコジェネレーションシステムも入れて温室の暖房や照明をコントロールし、液肥によって生育や成分も調整するという生産だとか。

 お父さんの代から続けた農家経営のうえに、このような技術を導入したそうです。

  フォルスターさんだけではできないことで、資金は地方銀行から借り、設備や技術についてはコンサルタントがいて今の形態にたどりついたそうです。

 天井にも届きそうなパプリカは専用の上昇機に人が乗って収穫され、選別やパッケージまで機械を導入している徹底ぶり。

 省エネ化や低コスト化もはかっていますが、価格は安めとのことで、さらに努力が必要だとの話でした。

 価格の問題は日本農業とも共通なんですね。

 とはいえ生産スタイルの違いには、見ていて複雑な気持ちになりました。

 視察最終日には、オランダ東部のワーヘニンゲン大学とフードバレー財団を訪れました。

 もともと農業大学だったワーヘニンゲン大学が、1998年に農業分野の国立研究機関などと提携し、リサーチセンターとの研究領域をすみわけるなどで実績をあげ、いまや国際的に有名な農業系大学となっています。

 その領域は「エネルギーと気候」「水と排出」「持続性」「付加価値」「生産と品質」などなど多岐に広がっていて、なかには人間の味覚の嗜好や行動様式など社会科学の分野ではないのかと思えるところまでフォローしているのです。

 例えば先ほど書いた大型施設園芸についても、どうすればエネルギーと効率を抑えられるかなどの問題は応用されてきていますし、知識や建設技術・ノウハウの輸出もおこないたいと意欲的です。

 日本の関係機関とも連携が進められているとのこと。

 基礎研究から応用まで貫かれる精神は for quality of life だと、名刺の裏にまで書かれていることは大きな強みなのかもしれません。

 大学のすぐ近くにフードバレー財団があり、ここでは企業との連携や製品開発への助言などが進められています。

 何から始めたらいいかわからない人や企業のためにワンストップで相談もできるし、研究機関との連携も。

 こうなると経済シンクタンクのようですが、競争以前の重要な問題に対しては企業の共同を勧めているといいます。

 それが何かといえば「安全」。

 食品ですから、一定の安全基準はどの企業も満たす必要があり、共通のコストになるわけです。

 そこでこのような財団が仲介の役割も担っているようで、今は健康志向も反映して減塩について取り組んでいるとの話でした。

 食の安全はEU全体で厳しめの基準があり、EUとしても企業の共同を促しているといいます。

 企業側からすれば、政府からの規制を前に自主的に対応する形になり、その前提のうえに製品化する際に競争となるとのこと。

 つまり何でも競争や抜け駆け的な経済社会ではなく、一定の共通ルールのうえの競争ということですから極めて欧州的だと私は納得。

 生産者支援というより日本でいえば経済産業省の領域でもありますが、とても興味深く説明を受けました。

 イタリア同様にオランダもまちなかの市場を視察しましたが、夕方になってきたのと雨のため店じまいも多くて残念。

 行った市場というのは、新教会とグロチウス像が立つマルクト広場という町の中心部で、塔上からの眺めはすばらしいのだとか。

 あいにく視察目的とは外れるため上りませんでしたが、きっと歴史的な街並みが一望できるんでしょうね。

 これまた余談ついでですが、アムステルダムの人だけなのか、雨でも傘を差さない人が多いのです。

 自転車の町らしく、雨合羽を愛用している人が多く見えました。

 日本でマンションの傾斜問題が騒がれていますが、実はアムステルダムの建物も少し前傾しています。

 写真でわかるでしょうか、その理由は建物上部にあるフックに家具などを引っ掛けて上の階に窓から入れるためなんだそうです。

 なるほど、地面に垂直では窓にぶつかって釣り上げられませんものね。

 最後になりますが、視察の合間にはシャロン・ダイクスマ経済副大臣との会談があり、それでも一言。

 オランダでは経済副大臣が対外的には農業大事と称することが許されていて、少しの時間でしたが両国の農業・食糧問題について意見交換しました。

 11月に来日する予定だそうで、再会の約束とエールの交換。

 海外の政治家との交流も私には初めてのことで、緊張しながらも全日程は終了。

 ブログ用に書いた報告ですが、きちんと党内で結果を共有できるように定型の報告文書はつくる予定ですが、まずは第一報として綴りました。

 国内的にはTPPが重要問題ですが、実は協議中の日欧EPAも、特に北海道の農産物と重なるだけに影響は心配になります。

 調査結果も含めて吟味が必要ですが、日欧EPAで北海道農業はさらに深刻を極めるというのが私の感想です。

 さて今日は時差ボケもなんのその、党北空知・留萌地区の「青空まつり」などに参加。

 久しぶりに子どもたちとも、ゆっくり夕食をとりました。

  【今日の句】 日本には こんなにおいしい ものがある

0 件のコメント:

コメントを投稿