2019年11月2日土曜日

新版「資本論」はすごい

 しっかり今日は学びの日。新版「資本論」刊行にあたり、山口富男・日本共産党社会科学研究所副所長の講演の場へ。新たな発見もあり、展望が見えるひと時でした。

 刊行の記念講演なので「資本論」そのものの解説ではありません。そもそも膨大な「資本論」を新たな訳で出すことになった理由とは、何だったのか。これまでと何が違うのか。山口さんによれば「資本論」の日本語訳は6つあるとのこと。7つ目となる新版は、マルクスが伝えたかったことを整理しぬいた点が特徴なのだと理解しました。

 「資本論」は、マルクスが今の形で執筆したものではなく、膨大な量の草稿・原稿をエンゲルスが編集して発行に至ったもの。大英博物館での経済書を書き写したマルクスの筆跡が読めないほど乱れていた文章を、エンゲルスが口述してアルバイトが書き写し、それをエンゲルスが整理して編集するという、気が遠くなるような作業の末に発行されたものなのです。

 BBCによる「過去1000年のなかで偉大な思想家」アンケートではマルクスが1位ですし、ユネスコの世界記憶遺産にも「資本論」と「共産党宣言」が登録されました。過去の著作という意味でなく、今日にも影響を与えているとの評価付きです。しかも新メガ版にて、マルクスのすべての原稿を見ることができる時代となりました。マルクスの目線で、資本論を見直すことができる環境になったのです。

 その豊富な原稿をもとにして注釈などもつけ直し、エンゲルスの見落としなども補い、何より21世紀を生きる私たちが読めるような言葉にしているというのは、本当にありがたい。難読な文章にあきらめた、という方も多いのではないでしょうか。その点では読了へのハードルは下がったように思います。

 私が印象に残ったのは、「資本論」は経済学の書と思われがちですが、そもそもは労働者がみずからの解放と社会変革に立ち向かう力にしてほしいと、資本主義社会を分析した本だという話。いわば「たたかいの本」であり「希望が見える本」なのです。山口さんも強調していたように思います。

 今の日本と世界の状況を見ても、貧困と格差の拡大や大規模な気候変動は、利潤第一主義のもとで引き起こされてきています。この課題を克服できないのなら、資本主義に代わる新しい社会体制にしなければなりません。資本主義社会の積極的な役割をとらえつつ、その内部にある矛盾から新しい社会=社会主義・共産主義社会を展望しているのが「資本論」の醍醐味と言えます。

 とはいえ、その醍醐味を自分の血肉にするのは時間がかかりそうです。しかし、何事も土台がしっかりしていないと、少しのことで動揺したりフラフラしたりしてしまいます。特に社会を変える・政治を変えることに専念している者として、どうしても理論的な土台は必要なのです。

 なかなか現実は目の前の課題ばかりに追われますが、やっぱり土台に立ち返ることが大事だと痛感した1日でもありました。

 【今日の句】揺るがない 土台はここに 知は力

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